初めて、買った車。それが、Audi TT でした。
免許は、ゴールド。免許をとってから、一度も車の運転などしたことはありません。このまま、一生、車の運転はしないかも・・・そんなことを思っていました。
それでも、車を運転すれば、もっと、自由になれる。そんな気がして、パンフレットなど集めては、ぼーっと眺めていました。楽しい一時でした。
子どものころ、ちょうど、世の中はスーパーカーブーム。フェラーリBB、カウンタック、ミウラ、コルベット、マセラッティ、ポルシェ、ロータス。
次々と、プラモデルを買ってきては、組み立てました。そのうちでも、ミウラは、会心の出来栄えでした。
そんな私のあこがれの国産車は、トヨタ2000GT。スーパーカーに比して、明らかに見劣りする国産車の中で、ほとんど、唯一、光っていました。
そして、もうひとつ、フェアレディーZ。 なんとなく、手に入りそうな、最高の国産車でした。プラモデルもたくさん作りました。
そう、それが、ここに来て、ゴーンさんの活躍です。新Z復活。プラモで作っていたころの面影がありました。価格も、手が届く。Z33の購入を考えました。
そんな私にとって、そのZの上を行く存在が、Audi TT でした。デザイン的に見て、明らかにZを凌駕していると思いました。コクピットの質感もそう感じました。
ある日、国道にとめてあるTTを見て、「なんだ、車かぁ」と思ったことがあります。その路駐している姿をみれば、誰でも、自動車以外のものが、そこに止まっているとは思わないはずです。
でも、TTのデザインは、それが、あまりにも斬新で、画期的であったため、一瞬、それが、普通の乗用車以外の何ものかであるということさえ、疑ってしまったのです。
私は、こうして、Zがいい、ポルシェがいい、TTがいい、などと、日々、揺れ動く気持ちを楽しんでいました。それで、十分と思っていました。お金もかかららないし・・・。友人の車に乗せてもらって、いろんなディーラーを廻ったのも楽しかったです。
そんなことをしながら、2年の歳月が流れました。そんな折り、突然、駐車場のスペースが手に入ることになりました。これは、もう、買うしかない。2年も考えたんだし・・・。そう思い、まず、Z33の購入を考え、ディーラーまで歩いて行きました。
しかし、結局、駐車スペースとの関係で、うまく行きませんでした。傷心です。がっかりです。もう、駐車場なんていらない。自暴自棄になりそうでした。
そんな
私に、一筋の光を与えてくれたのが、TTでした。かつて、車以外の何ものかであることまで疑って しまったあの車です。後光がさして見えました。もう、TTに頼るしかない。もう、買うしかない。
まるで、パソコンでも買うように、TTを買ってしまったのです。ディーラーさんにとっても、手間のかからない客だったのではないでしょうか。開口一番、「納車はいつできますか?」という質問ですから、買う気満々です。迷いなし。
こうして、自由になれるアイテムを手にした私でしたが、TTを動かすのには躊躇しました。とにかく、運転がこわかったのです。ちっとも、自由になんかなっていないのです。
なにせ、20年近く、運転したことがありません。本当は、こんな運転者を、公道に出すわけにはいかないはずです。危なくてしょうがない。そのことは、自分自身が一番よく知っていました。
でも、TTには、触っていたい。触れていたい。見ていたい。ずっと、側にいたい。そんな魅力がありました。ほおっておくわけにはいかないのです。私は、吸い寄せられるように、駐車場に近づいて行きました。
そして、TTの魅力に導かれ、とうとう、私は、駐車場からTTを出してしまったのです。二度と、自分の力では、この駐車場に戻ってくることはできなくなるかもしれないのに・・・。それなのに、出してしまったのです・・・。
もちろん、駐車場から出している間、ずっと、周囲の注目を集めていたことは、言うまでもありません。周囲の方々は、目が点になっていました。「おいおい、危なっかしいのがいるぜ。気をつけろ。ぶつけられるぞ。」みたいな雰囲気です。
それでも、周囲の寛容さと、私の臆病なまでの慎重さのおかげで、TTは、接触することなく、公道に出ることができました。
でも、車の中では、あたふた、あたふたしている人物がひとり・・・。
「どうするんだよ。これから。」、「アクセル、踏んじゃったよ。」、「進んでるよ。この車。」、「進むよ。車なんだから。」、「ハンドル、ちゃんときれるのかぁ。」「えっ、ナビが、なんか言ってるよ。」、「ガソリンいれなきゃ、まずいよ。」など、独り言の連発です。
こうして、私の旅が、はじまったのです。TTといっしょの旅が・・・。
文字通り、旅でした。道なりにしか、進めないので、どこに着くのか、わかりません。途中、必死の決意で、ガソリンスタンドに入った以外、6時間以上、運転しっぱなしです。疲れた。こうして、無事、また、もとの駐車場に戻ってくることができたのです。
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